卒業生だより
作業療法士(OT)として
働いた5年間。
3期生2名のそれぞれの想い。

作業療法学科 卒業生

作業療法士(OT)として
働いた5年間。
3期生2名のそれぞれの想い。

PROFILE
小林 健哉
社会福祉法人 埼玉医療福祉会 光の家療育センター/作業療法士
保健医療技術学部作業療法学科 2012年卒業
医療型障害児入所施設、療養介護施設である現職場には、肢体不自由、脳性麻痺、知的障害、発達障害などの方が入所している。小児から高齢者までリハビリを担当。

中里 真裕美
横浜市立みなと赤十字病院/作業療法士
保健医療技術学部作業療法学科 2012年卒業
急性期病院である現職場に入職。脳卒中、神経難病、骨折、がんなど、様々な身体障害領域の患者さんの治療を担当している。

作業療法学科の第3期生。現在も同期の仲間と連絡を取り合っているという二人。小林さんは、障害児や高齢者が入所している施設、中里さんは、急性期の患者さんが来院する病院で、疾患や対象となる方も異なる場所で活躍しています。それぞれの現場での具体的なお仕事内容や魅力、これからの作業療法士の未来について話していただきました。

作業療法士として、人と向き合う。

-お二人が作業療法士(OT)としてそれぞれ心掛けていることはなんですか?

小林:私が働いている施設では、障害をもつ子どもから高齢者までが入所しています。生まれながらに身体が動かなかった重障心身障害者の方は、ご自身で言葉を発することができず、自分の意志を伝えることができない方もいらっしゃいます。そのような方と、一緒に寝転がって同じ景色を見る、一緒に散歩に行くなどをして、時間をかけて関係性を築くようにしています。相手は人生の大先輩です。言葉を発することができないからこそ、尊敬の念を伝えながらのリハビリを心掛けています。

中里:私が働いている急性期の病院では、突然脳卒中などが発症したため緊急で搬送されて来られる方もいます。突然身体が動かなくなった。そのような患者さんは、すぐには現状を受け入れられない方も多いです。精神的にも大きな負担を感じられていますので、気持ちを汲み取りながら接しています。脳卒中、神経難病、骨折、がんなど、さまざまな疾患の方に、医師やスタッフとチームとして取り組んでいます。まず作業療法士として、リハビリとはどういうものなのかを丁寧にお伝えするようにしています。

好きなことがリハビリにつながる。身体にも心にもアプローチする。

-リハビリを専門とする職種はいくつかありますが、OTならではの特徴を教えてください。

中里:作業療法士として私が大事にしているのは、生活の場面を意識すること。例えば、食事とトイレ。これは生きていくうえで最も重要な2つですよね。食事をしながら片手を動かしても崩れない座位姿勢、トイレの一連の動作など、身近な目標を設定したリハビリを行っています。

小林:自分らしい生活をするために必要な“座る”という動作をできるようにする。急性期の患者さんは、それがスタートなんだよね。

中里:そうだね。あと、精神領域があるのもOTの特長の一つです。身体だけではなく、心へのアプローチも一緒に行います。

小林:発達障害をもつお子さんには、知的年齢に合わせながら遊びのなかで発達を促していきます。もともと持っている機能をいかに引き出していくか。例えば、自閉症の子どもは、モノと自分と相手の関係がわからないので、くすぐりあいっこや、物の貸し借りなどの遊びを通して相手に気づくことを促します。少しずつ距離を縮めていくんです。作業療法士は10人いたら10のアプローチがあるといいます。自分が得意とする分野や好きなことをリハビリにつなげることができることもOTの魅力だと思います。

中里:患者さんの不安を少しでも軽くするために、しっかり傾聴して、一緒にがんばっていきましょうという姿勢は大切ですよね。以前に担当した、麻痺でお箸が持てなくなった患者さんは、退院した今でもときどきご挨拶に来てくれます。発症してすぐの不安な時期に少しでも支えられたのかなと嬉しいです。

小林:患者さんと信頼関係を築くことって大切だよね。お子さんの障害について、お母さんは大きな不安を抱えています。核家族が増え、子育て環境は、地域との関わりも少なくなっていて、悩みを話せる人がいないこともあります。お子さんやお母さんから教わることも多いです。

中里:うん、患者さんから学ぶことって多い。

小林:先日は、重症心身障害の方とカラオケをしたのですが、カラオケ一つにしても注意しなければいけないことがある。当たり前のようにお腹が空いてご飯を食べたり、お風呂に入ったり、遊びができるということって実は幸せなことなんだよね。

治療する。予防する。地域の生活を支える。

-OTとしてこれからどんな活動をしていきたいですか。

小林:子どもの成長を見ながら、一緒に成長していける今の現場を大切にしていきたいと思っています。社会には、病院に行くほどではないけれど上手く生活できない軽度の障害をもったお子さんもいます。お母さんの心理的負担を減らすように、気軽に子育てについて相談できる場や、サービスを地域で展開していきたいと思います。

中里:OTは子どもの病気、心の病気、予防医学、介護予防、介護、生活全般まで、本当に幅広く活動できる職種だと思います。これからは、介護が必要になる前の予防支援などが増えてくるのではないでしょうか。デイケアを利用していた患者さんに、週1回のリハビリがとても楽しみだったと聞いたことがあります。病院や施設から自宅に戻る方や、障害も固定されている方に対してどういう支援ができるのか。私は、ずっとおばあちゃんと暮らしてきたので、一緒に過ごす側の経験も還元していきたいと思います。病院内だけではなく、介護老人保健施設、訪問リハビリなど、地域の作業療法士として活動していきたいと思っています。

-卒業後のつながりについて教えてください。

小林:卒業してからも、みんなで集まって患者さんの障害や治療のことなどを大学の勉強会で学び合っています。あと、旅行したりもしてるよね。

中里:そうだね。先生とも変わらず会えるのも嬉しいです。卒業してからもつながってるって本当に文京生ならではだと思います。そういえば、今日もこの後みんなと食事の約束をしているんです。

※インタビュー内容はすべて取材当時のものです。