卒業生だより
自分とちゃんと向き合ってみた

秋山 友理恵さん 台東区立台東病院
リハビリテーション室 作業療法士

自分とちゃんと向き合ってみた

PROFILE
保健医療技術学部 作業療法学科 2016年卒業

対象者に寄り添いながら、一人ひとりに合った作業療法を考える。

作業療法士の仕事は決められたことを淡々とこなすようなものではなく、自分で考えて自分で工夫できる仕事。でも、間違っても自分が主体になってはいけない。あくまでも対象者の方が主体。その方が今後続く人生をどう過ごしていきたいのか、相手に寄り添いながら話を聞いていって、やりたいことができるようになるための工夫を一緒にやっていく。それが作業療法です。

たとえば、認知症で全く動かずに一日中過ごしてしまいがちだったある利用者さんとは、お話しているうちに、女学校時代に書道が好きだったことがわかりました。様々なリハビリにお誘いしてもやってくださらなかったその方が、筆と紙を用意してみたところ、施設でもご自宅でも楽しそうに書いてくださるようになったことがありました。

対象者の方が生きてこられた軌跡を精一杯感じ取って、その方のための作業療法のプログラムを考えて、やってみる。それは自分の経験やアイデアが問われるところ。その方が生きがいを見つけたり、もとの生活を取り戻せたり、元気になったり、そういう変化に繋げていくことができる、とてもポジティブな仕事だと思います。

私自身が、作業療法を学びながら、作業療法を受けていたのかもしれない。

実は私も4歳の頃から「感音性難聴」という障害で、人の声が聞き取りにくく、高校の頃までは人の会話に入っていけない寂しさや辛さ、負い目を感じていたんです。でも、学生時代、作業療法学科で学びながら自分の障害ともあらためて向き合うことになって、障害を恥ずかしがるのではなく、周りにそれを伝え、働きかけて環境を変えていけばよいことに気づきました。

難聴とその乗り越え方を卒業論文のテーマにして、先生のご指導のもと論文をまとめあげたことは、自分のマイナスだと思っていたところがプラスに変わるとても大きな体験でした。

働き始めてからも、全身麻痺と高次脳機能障害で意思表示が難しい患者さんに、私が学んでいた簡易的な手話をお教えすることで、その方が意思をどんどん表現できるようになったことがありました。それも私の障害があったからこそ、できた提案。障害も自分の強みだと思える経験でした。

学生時代の同級生とも3ヶ月に1度は集まって、自主的な勉強会を開いたり、大学のときの先生もそこに顔を出してくださったりと、今も学びは続いています。働いてから作業療法がもっと勉強したくなっている。いつか大学院にも行って、もっと深めたい。

マイナスなところだってプラスにも変えられる。自分の強みにしていける。 ー 秋山 友理恵

※インタビュー内容はすべて取材当時のものです。